中学受験における物理分野の概要

物理は中学受験理科において、特に重要な位置を占める分野です。中学受験の物理分野では、力学の基礎、音と光、電気と磁気、熱と温度などの項目が出題され、基本概念の理解と実験考察能力が問われます。

難関中学校の試験では、単なる知識の暗記だけでなく、物理現象の原理を理解し、与えられた条件から結果を論理的に導き出す思考力が重視されます。本ページでは、中学受験に必要な物理分野の重要概念、頻出問題、解法テクニックを提供し、効率的な学習をサポートします。

力と運動 てこと滑車 光と音 電気と磁気 熱と温度 実験問題

力と運動 - 中学受験の頻出ポイント

力と運動は中学受験物理の中核となる分野で、特に難関校の入試では重点的に出題されます。基本概念をしっかり理解し、様々な状況での応用力を身につけることが重要です。

力のはたらき

物体に力が働くと、物体の形や運動の状態が変化します。中学受験では特に以下の内容が重要です。

力の種類と性質:

重力、摩擦力、弾性力、浮力、磁力、電気力など

それぞれの力の特徴と働き方を理解することが重要です。特に「力のつり合い」は頻出テーマです。

圧力の公式:

圧力 = 力 ÷ 面積

単位面積あたりに働く力を圧力といいます。面積が小さいほど圧力は大きくなります。

入試問題例

面積が2cm²と8cm²の2種類の足をもつ昆虫がいます。体重が0.24gのとき、それぞれの足1本にかかる圧力は何Paですか。ただし、体重は均等に6本の足にかかるものとします。(重力加速度は10m/s²とする)

解答:

1. 昆虫の体重をNに換算:0.24g × 10m/s² = 0.0024N

2. 1本の足にかかる力:0.0024N ÷ 6本 = 0.0004N

3. 面積2cm²の足にかかる圧力:0.0004N ÷ (2×10⁻⁴m²) = 2Pa

4. 面積8cm²の足にかかる圧力:0.0004N ÷ (8×10⁻⁴m²) = 0.5Pa

5. 結論:面積2cm²の足にかかる圧力は2Pa、面積8cm²の足にかかる圧力は0.5Paです。

てこの原理

てこの原理は中学受験で非常に頻出する分野です。力のモーメントの概念を理解し、様々な道具への応用を学びます。

てこのつり合いの法則:

力 × 支点からの距離 = 力 × 支点からの距離

左右の力のモーメント(力×距離)が等しいとき、てこはつり合います。

力のはたらきと種類 - 入試対策

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てこの原理と問題演習 - 中学受験の重要単元

てこの原理は中学受験で最も頻出する物理分野の一つです。シーソーや天秤などの身近な道具の原理として理解しやすく、応用範囲も広いため、多くの入試問題に登場します。特に開成、麻布、筑波大学附属などの難関校では、複雑なてこの問題が出題される傾向があります。

てこの基本原理

てこは支点を中心に回転する棒で、力点に力を加えると作用点に力が伝わる仕組みです。支点からの距離と力の関係を理解することが重要です。

てこのつり合いの条件:

力点側の力 × 支点から力点までの距離 = 作用点側の力 × 支点から作用点までの距離

これは「力のモーメント」と呼ばれ、支点を中心とした回転力の大きさを表します。つり合いの状態では、左右のモーメントが等しくなります。

てこの利用の種類:

第1種のてこ:支点が力点と作用点の間にあるもの(例:はさみ、シーソー)

第2種のてこ:作用点が支点と力点の間にあるもの(例:ドアの取っ手、くるみ割り)

第3種のてこ:力点が支点と作用点の間にあるもの(例:トング、釣り竿)

中学受験では特に第1種のてこが頻出しますが、日常生活のさまざまな道具がどの種類のてこに該当するかを理解することも重要です。

てこを使った仕事の原理

てこを使うと力の大きさを変えることができますが、物理学の基本法則である「仕事の原理」によって、得られる仕事(力×距離)の総量は変わりません。

仕事の原理:

力点での仕事 = 作用点での仕事

力点での力 × 力点の移動距離 = 作用点での力 × 作用点の移動距離

力が小さくなれば距離は大きくなり、力が大きくなれば距離は小さくなります。つまり、てこは「力と距離のトレードオフ」を行う道具です。

入試問題例 1(基本問題)

図のような棒があり、支点から左側に3cm、右側に12cmの位置におもりをつるしています。左側のおもりの重さが40gのとき、棒が水平につり合うための右側のおもりの重さを求めなさい。

解答:

てこのつり合いの条件より、
左側のモーメント = 右側のモーメント
40g × 3cm = x × 12cm
120g・cm = 12x cm
x = 10g

よって、右側のおもりの重さは10gです。

入試問題例 2(応用問題)

長さ60cmの均質な棒があり、両端からそれぞれ10cmの位置に糸をつけて水平に支えています。左端から20cmの位置に200gのおもりをつるすとき、左右の糸にかかる張力を求めなさい。ただし、棒の重さは300gとする。

解答:

1. 棒の重心は中央(左端から30cm)にある

2. 左の糸の位置を支点と考えてモーメントを計算する
右の糸の張力をTR、左の糸の張力をTL、重力加速度を10m/s²とすると
TRの距離:左の糸から40cm
棒の重さの距離:左の糸から20cm
おもりの距離:左の糸から10cm

3. モーメントのつり合い
TR × 40cm = 300g × 10m/s² × 20cm + 200g × 10m/s² × 10cm
TR × 40 = 300 × 10 × 20 + 200 × 10 × 10
TR × 40 = 60,000 + 20,000
TR × 40 = 80,000
TR = 2,000gf = 20N

4. 上向きの力のつり合い
TL + TR = 棒の重さ + おもりの重さ
TL + 20 = 300 × 10 + 200 × 10
TL + 20 = 3,000 + 2,000
TL + 20 = 5,000
TL = 4,980gf = 49.8N

よって、左の糸の張力は49.8N、右の糸の張力は20Nとなります。

てこの応用 - 日常の道具

てこの原理は多くの日常道具に応用されています。中学受験では、これらの道具がどのようにてこの原理を利用しているかを説明できることも重要です。

てこの実験問題

中学受験では、てこの原理に関する実験問題もよく出題されます。特に「てこの実験からつり合いの条件を導き出す」「未知の重さを求める」といった問題に慣れておくことが大切です。

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電気と磁気 - 入試対策

電気と磁気の分野は、中学受験理科においてやや難易度が高い分野ですが、多くの学校で出題されます。基本的な回路の仕組みや電気の性質を理解することが重要です。

電流と回路

回路における電流・電圧・抵抗の関係を理解し、直列回路と並列回路の違いを把握することが重要です。

オームの法則(中学受験レベル):

電圧が高いほど、電流は大きくなる

抵抗が大きいほど、電流は小さくなる

中学受験では厳密な計算よりも、定性的な理解と回路図の読み取りが重要です。

磁石と電磁石

磁石の性質と電流が作る磁界についての理解が問われます。

電磁石の性質:

コイルに電流を流すと磁界ができる

電流の向きを変えると、磁極の向きも変わります。電流が大きいほど、また巻き数が多いほど磁力は強くなります。

入試問題例

下図のような回路があります。スイッチを入れたとき、検流計の針はどちらに振れますか。また、そのときコイルの右端はN極、S極のどちらになりますか。

[回路図の説明:乾電池の+極から導線がコイルを通り、検流計を経由して乾電池の−極に戻る回路]

解答:

1. 電流は乾電池の+極から−極に向かって流れるため、検流計の針は右に振れます。

2. 右手の親指を電流の向きに向け、残りの指を巻くと、指の向きが磁界の向きを示します。この場合、コイルの右端はN極になります。

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中学受験物理の合格サポート

難関中学に合格するための物理分野の重要ポイントと解法テクニックを随時更新しています。学校別の出題傾向に合わせた効率的な学習で、受験を成功に導きましょう。

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